来なくてもいいのに一週間などすぐに過ぎた
母親の言う通りなら、そろそろ例の従兄弟が来る
しかし関わる気など少しもない
僕は書庫で本を読んでいた
中身が詰まった大きな本棚に囲まれた空間は静かで僕のお気に入りの空間の一つだった
その中の一冊を読み終えた僕は脚立に上り、それを本棚に戻した
次は何を吟味しようかと本棚に目を走らせていたとき
「お、坊っちゃん発見!」
突然耳に届いた声に思わず脚立から落ちそうになる
今までここで聞いたことのない、無邪気な響きを持つテノール
「あはは、坊ちゃんってば慌て過ぎ。」
体勢を立て直し、声のした方に振り向く
そこには笑顔を浮かべて立っている少年がいた
それほど大きくない身長で、もしかしたら僕と同じくらいかもしれない
少し痩せ型の体型と、整った顔立ちと結んだ長めの黒い髪の持ち主だった
無言でいる僕を見て、自分を誰だか理解していないと思ったのだろう
少年は顔に浮かべていた笑みを微笑に変え、胸に軽く手を置いてお辞儀した
「はじめまして、本日からこちらにお世話になることになりました。木(この)芽(め)と申します。どうぞよしなに…なんてね。」
言い終えるのが早いか少年、木芽はだらしない笑みを浮かべた
「坊ちゃんのことは知っているよ。キヨさんと坊ちゃんのお母さんが教えてくれたからね。」
僕はすでに嫌悪でいっぱいだった
病弱だというから、おとなしい静かな性格の人間かと思っていたのに、僕の従兄弟はそれとは正反対の人間だった
そもそもなんで坊ちゃんと呼んでいるのか
キヨの影響だろうか
思っていることが顔に出ていたらしい。木芽は僕を見たまま苦笑した
「あはは、そんな嫌な顔しないでよ。まあ、そういうことでよろしく。」
この日から僕の穏やかな生活に影が差したのは言うまでもない


