「もう少し詳しく教えていただかないと、こちらも納得できません。」

そう告げると、少し時間を置いた後受話器の向こう側からため息が聞こえた

「今内容を反芻してみて、私もそう思ったわ。これで納得できたら心の広さが計り知れないわね。」

軽く喉を鳴らしながらそう告げる母にもはや呆れさえ感じるが、それを言葉にはしない
時間の無駄だろう。

「あの、僕に従兄弟なんていたのですか?」

今まで聞いたこともない
親戚の有無にも興味がなかったため聞いたことがなかった

「いるのよ。貴方の一つ年上の男の子がね。その子が病弱で、そこで過ごすのがいいだろうってことで。私の妹夫婦の子で、外国に住んでいるから騒がしくて仕方ないらしいわ。それで、さっきも言ったけど病弱だから学校にも行ってない。キヨが全部してくれるし、貴方が特別何かする必要はないし別にいいでしょう?」

冗談じゃなかった
ここは今、僕だけの城
今まで会ったことも、そもそも存在すら知らなかった従兄弟など居られてはたまったものじゃない

「母さん、お言葉ですが。」

「そこは私の家よ?文句があるなら言ってごらんなさい。私は貴方を社会的に抹殺することも出来るのよ。」

これが実の息子に向ける言葉だろうか
母親の意図的にいつもより低くされた声を聞いて僕の背筋に冷たいものが走った

「…構いません。」

「さすが誉。貴方ならそう言ってくれると思っていたわ。一週間後くらいには行くと思うからよろしく。それじゃあね。」

先ほどとは比べられないほど明るくなった声を最後に電話は切れた
機械的な音が残された受話器を戻し、僕も部屋に戻った

まさしく問答無用という言葉が似合う人だと思う
母親が言った妹にも会ったことがないのだが

それにしても過ごすというのはつまり療養ということだろうかそれが出来る場所など海外にでもあるだろうに
とりとめのない考えを頭に浮かべながら、僕は勉強を再会した