僕は何も言わずに木芽の言葉を聞いていた
「俺、ここに来て楽しかったよ。キヨさん無口だけど、優しいし。誉もちょっと愛想内けど、何気に世話焼きだし。俺が病気のせいで突然寝ているとき、必ず傍にいてくれた事本当は知っているよ。」
だんだんと木芽の手の力が弱くなっている事に気づいた
それが気のせいだと思い込みたくて、僕は手に力を込めた
「でも、特別気を使ったりはしないから、俺も楽だったし、好きなことしていられた。楽しかったよ。なんかこう言うと俺が犬で、誉が飼い主みたい。あはは。」
弱々しく微笑んだ誉に、僕は笑顔を返そうとした
でも、出来なかった
笑い方が分からなかった
しばらく笑っていなかったからだ
体裁を繕い、表情を動かさなかったからだ


