その日は案外普通にやってきた
違和感は確かにあったが、実際に聞いて、見るまでは実感出来なかった
ドアの前に立っている医者の話しを聞いているのに頭が上手く働かない
まるで夢の中であるかのように浮遊感を感じる
部屋に入り、目の前にあるベッドの上に寝ている木芽の手をおそるおそる取ってみると、閉じていた目はゆっくり開いた
「…あはは、誉だ。」
いつもよりも弱々しく浮かべられたそのだらしない笑み
「そんな顔しないでよ。俺心配しちゃうよ。」
自分がどんな顔をしているかなんて確かめるすべは木芽の部屋に存在していない
「凄く瞼重いけど、誉にさ、言いたい事あるから頑張るね。」
そう言うと木芽は僕の手を握った
「誉、学校に行きなよ。もったいないよ、せっかく行けるのに。俺は知らないことあるのが嫌で、一気に全部終わらせたけど、誉はそんなことする必要ないから。凄くもったいない。」


