扉を開けて


「木芽、夕食食べに行くよ。」

そう言うと僕は書庫を後にする
木芽が慌てて後を付いてくるのが分かった

「俺、坊ちゃんと友達になりたいな。」

背後から唐突に聞こえたのはそんな言葉だった

「…何?」

「だって、俺と坊ちゃんって従兄弟でしょ?そうじゃなくて、友達になりたい。」

そう言うと木芽は僕の前に回りこんできた
突然のことに僕は驚き、歩みを止めた
少し身長が高い木芽はずいっと乗り出し目を輝かせている
まるで自分の案が素晴らしいと言いたげだ

「ね、ね、いいでしょ?」

楽しそうにそう言う木芽を見ているとだんだん左右に勢いよく振られる尻尾が見えそうだ

「…好きにすれば?」

「わーい!!」

嬉しそうにそう叫ぶとくるくると回り始めた
僕はそれを避けて居間へと向かった

再び木芽が僕の後ろについてくるのを感じながら、僕は顔に出さないようにしつつ、友達というその二文字を反芻する

「誉。」

後ろからした、聞き慣れたテノールが言った事のない三文字を紡いだのに驚いた

「友達だからこう呼んでもいいよね?」

非常に楽しそうだ