それほど厚くないその本のあとがきへと入った時、外からは橙色の光が差し込んでいた
「…坊ちゃん?」
淀んだ響きを持つ声に顔を上げると、うっすらと開いた目をこちらに向けている
「もう夕方?」
僕は頷いて視線を本へと戻した
文字の羅列を辿っていると、木芽の声が再び言葉を紡ぎ始めた
「俺の名前さ、由来何か分かる?」
僕はその言葉を耳に受け入れながら、しかしそれには答えない
「二月って如月とも言うけれど、もう一つ呼び名がある。それが木芽月。他よりも短い月だから。ちょっと皮肉っぽいよね。」
僕の答えは聞く気がないらしい
一息でそう話しきると、再び黙り込んだ
僕はあとがきを読み切り、本を閉じた
再び木芽の方を見ると真っ直ぐこちらを見ているその瞳と目が合った
「坊ちゃんのその俺に気を使わないところ嬉しいよ。今までは皆、こんな話をするとそんなことないとか、気にすることはないとかそればっかり。」
僕は立ち上がり、本を棚に戻した


