扉を開けて


そう言っていられなくなったのが、夏休みの三分の二が終わった頃だった
木芽の睡眠時間の長さが縮まるどころか伸び続けているからだ
大丈夫なのか聞いてものらりくらりとかわされ、気づけばはぐらかされている

本格的に危ないと思ったのは今日の出来事からだ

「坊ちゃん、この本ってここでいいの?」

僕が頷くと木芽は言われた通りに本を棚に入れていく
新しくキヨの買ってきた大量の本を書庫にしまっているのだ
言いつければきちんと従う木芽に犬の錯覚を覚えながら、僕は自分の持っている本も棚に入れる

しまおうとした本に興味深い物があり、その表紙を眺めた瞬間、背後から物が倒れるような大きな音が響いた

急いで振り返ると、木芽が倒れていた
背中が急激に寒くなったが急いで駆け寄り、抱き起こすと木芽が息をしていることに自分でも驚くほど安堵した
さらに驚いたのは木芽が眠っていることだった
いつものように昼寝をしているかのように穏やかな寝息を立てている

もう一つ驚いたことがある
木芽を抱き起こしたときに触れた手首から伝わった音
それがとても速かった。自分と比べるとそれは二倍ほどもあるのではという速さだった

昔読んだ本に書いてあった言葉を思い出した
生物の一生のうちに心臓の動く回数は皆同じで、それが早いか遅いかによってそれぞれの寿命が決まると