扉を開けて


木芽はそれをくすくすと笑いながら受け取った
そして何やら自身のポケットを漁ると、あ、と声を漏らした

「どうしたの?」

僕が聞くと木芽は苦笑しながら池を指差した
僕はその先を視線で辿ってみると、池の中に何かが沈んでいるのが見えた

「あはは、薬落としちゃった。」

一瞬木芽が何を言っているのか分からなかった
声が明るく、たいしたことではないとその音で言っていたから

「は、早く拾わないと!」

そう言う僕に木芽は笑みを浮かべて見せた

「いいよ。あんなもの、最初からあってもなくても変わらない。習慣みたいなものだったし、…そう初めから意味ない物だから。」

最後の方はまるで自分に言い聞かせるようにそう言うと、木芽は僕の手からバケツを取り、踵を返した
僕はその言葉の意味を理解できないのと、本当に拾わなくてもいいのかと思ったがその後に続いた

その後木芽は満面の笑みで花火をつけては眺め、つけては眺めを繰り返していた
僕もそれなりに花火に火をつけていた
視線だけを動かし木芽を見ると、満足そうな目で僕を見ている
こんな時、木芽はやっぱり年上なのだと思う
きっと僕が実は楽しんでいることに気づいているのだろう。

散っていく火の花と木芽を交互に見つめ、今の自分に驚くと同時にほっとした
誰かと一緒に何かをするだけでこんな気持ちになるなんて思わなかった

夏休みだけでなく、ずっとここにいればいいのに
そんなことを考えてしまったのはきっと、暑さと花火の眩しさで頭が麻痺しているからだと言い訳をした