ある日、木芽の呼び声で目が覚めた
昼寝をしていたはずなのだが、寝始める時間が遅かったこともあり、気づけば外は暗くなっていた
「坊ちゃん、花火しよう。」
夕食を食べている途中、唐突に木芽がそう言った
「花火なんてどこにある?」
わりと何でもあるこの家にもそんなものは存在していなかったと思う
あったとしても湿気ているだろう。
「キヨさんに買ってきてもらった。」
「…お前、居候のくせに結構人の家政婦使うよな。」
家から出ない僕と木芽の物資の供給ルートはキヨだけである
頼めば大概の物を買ってくるキヨには、その分も足された給料が僕の母親から支払われているはずだ
しかし老体に鞭を打つような真似はしたくないので必要最低限しか頼まないのだが、木芽は結構遠慮がない
「一人でやれよ。」
そう言い放つと木芽はじっと僕の方を見つめた
首を少し傾げ、上目遣いで人を見る
正直に言うと、僕はこれが苦手だ
まるで仔犬を捨てる瞬間のような重圧が心にかかる
木芽が犬のように見えるのもあるが、木芽はこれを理解してやっているのだから、尚更たちが悪い
「…分かったよ…。」
「よし、風呂入ってくる!」
風呂上りにするつもりなのだろう
木芽は急いで自分の食器を重ねて台所へと持って行った
ストレスで痩せるか胃に穴が開きそうだと思いつつ、僕も自分の食器を重ねた


