次の日、木芽は何もなかったかのように接してきた、否、いつも通り邪魔だった
「坊ちゃん、お電話です。」
母から二回目の電話が来たのはそれから三日ほど経った後だった
キヨの抑揚のない声に促され、僕は受話器を耳に当てた
「もしもし、誉? 木芽君とはどう?」
「返品したい気持ちでいっぱいです。」
そう正直に返すと、電話の向こうから喉を鳴らす音が聞こえた
これが母親の笑い声だと知っている
「まあ、そう言わずに仲良くしてなさい。夏休みが終わるくらいまでしかいないのだから。」
初耳だった
夏休み期間だけだったのか
それまでなら耐えられる、いやそれでも結構日があるな…
「木芽君に代わってくれる?」
母親にちょっと待って下さいと言い、木芽を探してみる
僕の方から木芽を探すなんて初めてだ、と頭の隅に浮かんだが掴んでおくことはしない
木芽はすぐに見つかった
縁側で寝そべって本を読んでいた
電話の場所が分からないというので、面倒くさかったが案内してやった
人の電話を盗み聞きするという嫌な趣味はなかったが、少しだけ聞こえてしまった
「…部屋が空いているって言っていたわ。今からでも移れるそうだけれど…。」
「…ですから、俺はあそこに行くつもりは…。」
何の話かは分からないが、行くつもりがないという言葉を聞いて木芽は最低でも夏休み期間はいるのだろうなと思う
そのことに安堵している自分には目を向けず、僕は書庫へと向かった


