私たちは踊り始めた――


「ダンス、お上手なんですね?」


「そんなことないです、ルイ王子のリードがお上手なだけですよ。」


私は、微笑みながら言った。


「そんな、ご謙遜を…」


「謙遜なんかじゃありません。本当に、ダンスうまくないんです。」


私は、まだアンバーニが生きていた頃数年だけダンスを習っていた。
だが、アンバーニがこの世を去ってからは毎日こき使われる毎日。
ダンスなどできるはずがなかった。


「ダンスをしたのなんて、6年ぶりで…今でも、ついていくのがやっとです。」


私の言葉に王子は驚いたような顔をした。


「ここまで、できてついていくのがやっとなんて…もっと自分に自身をもってもいいのでは?」


王子の言葉に苦笑いしながら、そうですかね、と私は答えた。
王子は、私の苦笑いに気づいたのか、しばらくはなにも言ってこなかった。