I MISS YOU…[短編]



***


「ん…あれ、俺…」





目が覚めると…桜の花は満開だった。
真っ暗な中で、薄いピンク色の花びらだけが、ヒラヒラと宙を舞って落ちて行く。

桜の木を見上げながら、俺はつぶやいた。





「キレーだな、有菜…




―――有菜…?」





はっとして、辺りを見回した。
その時、有菜の姿はもうどこにもなかった。



あれから毎日あの倉庫に行ったけど、また有菜と会う事はなかった。





「おっす仁」



「おー、おはよ!」





あの日から、俺はいつもと同じ生活に戻った。

前とちっとも変わらないはずなのに…
心の中が、どこか悲しくて。どこか寂しくて。


それはきっと、もうあの時みたいに、君が隣にいないから。