有菜そう言って上を向き、ハアッと息をはいた。
はいた息が白く染まり、まだ肌寒い、春の夜風が有菜の長い髪を揺らした。
桜の花びらと一緒にフワリと長い髪が風に舞い、有菜はゆっくりと振り向いた。
その目には…涙が浮かんでいた。
その表情を見て、俺の胸はギュッとなった。
「あたし…毎日あなたと話せて、楽しかったよ。
すごくすごく…嬉しかったよ。
…でも、バレちゃったんなら仕方ないや。
あたしはもう、ここにはいられないね…
やっぱ幽霊なんて、気持ち悪いよね…
仁くん…怖がらせてごめんね?
――…けど、これであたし、もう心残りなんてないよ。
…今までありがとう。
仁くん、本当に…大好きだったよ」
有菜の頬を流れた涙が、ポタリと下に落ちた。

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