有菜と、離れたくなかったから。
有菜と、もっと一緒にいたかったから。
長い髪に、綺麗な灰色の瞳。
少し大人びた顔つきなのに、笑顔はとても可愛くて。
桜の花びらが舞うこの場所で、有菜を初めて見たときから…
俺はきっと、有菜に惹かれていたんだと思う。
「早く掃除しよっか。
昨日みたいに暗くならないうちに」
「あ、うん…」
クスクスと笑いながら話す有菜を見ながら。
昨日はきっと、木の影になっていて有菜の事が見えていなかったんだ。
自分に、そう言い聞かせていた。
「仁くん?どうしたの?」
ぼーっとしていたのか、有菜は心配そうに俺を見つめた。
「ん?何でもねえよ」
俺はわざと明るく振る舞った。
有菜はこれからもずっと居てくれるって、そう、信じて。

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