俺は放課後、昨日と同じようにあの倉庫に向かった。
「あ、仁くん!今日は早かったね」
有菜が桜の木の後ろから顔を出して、笑顔で話しかけて来た。
朝のことを考えて、少しドキッとしたけど…俺は至って平然と振る舞った。
「ああ、もういたんだね」
「うん。だってあたしの家はここだから」
そう言って、有菜は隣にある桜の木を指さした。
聞くべき、なのかな…?
でも聞いたら、なぜか分からないけど。
有菜がいなくなってしまうような気がするんだ。
「………有菜」
「ん?なに?」
「…いや、何でもない」
有菜の笑顔を見ると、俺は何も言えなかった。
というか、言いたくなかったのかもしれない。

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