永遠に存在する宿命を、造られる前から決められた器。
その材料として選ばれたのは兄神の無限に伸びる爪と、妹神の無限に伸びる髪の毛。
二柱の神はそれを三日三晩休まずこねた。
魔力と願いを込めて。
三日目の夜出来上がったのは、人と寸分違わぬ形の人形だった。
四日目の朝、神々は世界に散らばる全ての精霊を使役し『涙』を封じ込めるために動き出した。
このときすでに人口はピーク時の三分の一にまで減っており、文化レベルが2、3000年後退したという。
捕捉された『涙』は執拗に抵抗し、争いは数百年に及んだ。
そしてついに器に封印したのだった。

しかし代償も大きかった。
まずこの戦いによって消滅した精霊が少なからずいた。
精霊が消滅した種族は緩やかに絶滅する。
それでも神々がフォローすれば精霊が復活することもできたが、それがかなわないほど神の消耗は激しかった。
しかも神々の振るった魔力が世界にばらまかれ、人の中に蓄積された。
場所によって濃さが違ったため強い魔力を持つ人間とそうでない人間が生まれることになる。
神自身は疲弊しており休息を必要としていた。
神は精霊たちに復活までに億単位の年月を要すると宣言された。