「神々が決断なさった」
光の精霊が神妙な顔で無数に集った精霊たちを見回した。
「決断ですか…」
普段あまり発言しない大地の精霊が重々しく聞き返す。
「何を決断なさったのですか?」
ざわざわと落ち着かない風の精霊が焦れたように先を促す。
「あの『涙』に入れ物を創られる」
「入れ物!?」
風の精霊と共にバサバサと飛び回る鳥の精霊が、驚いて森の精霊にとまった。
「入れ物ってどういうことですか?」
光の精霊が鳥の精霊に分かりやすく説明する。
「今の『涙』はただ人間を滅ぼす、それのみで動いておる。だからそんなことを考えない器の中に入れるのじゃ」
「器を神々がお造りになられると?」
火の精霊が皆から少し離れたところから質問した。
離れているのは皆を熱から守るための配慮だ。
側にはマグマの精霊がいる。
「その通りじゃ。その器は『涙』が乾かぬ限り永遠に存在することになるじゃろう」
光の精霊はさらりと答えたが、器がどんな形になるか彼らはこのとき全く知らされていなかった。
知っていてもそれがどんな意味を持っているのか、どんな可能性を持つのか、想像するのは無理だろう。
何しろ彼ら自身は寿命というものと無関係に存在しているからだ。

その器の形は人の姿になった。