始めにあったのは何か。
それはもはや神にしか知り得ないこと。
ただこの世界には二柱の神がおわし、二柱につかえる様々な精霊が存在した。
兄たる神は夜、妹たる神は昼を司る。
兄たる神は海、妹たる神は陸を司る。
兄が雨を降らせれば妹が太陽を遣わせる。
春と夏は妹神の季節。
様々な花が咲き乱れ命を謳歌する。
秋と冬は兄神の季節。
様々な実りをもたらしたあと眠りの季節に誘う。
そうやって世界はバランスを保っていた。

あるとき兄たる神は戯れに海へ自分の血を一滴落とした。
それを精霊が祝福した。
するとどうだろう。
そこから初めての生命が誕生した。
生まれたての命は水に溶け込みそうに儚く弱々しく今にも消えてしまいそう。
兄妹神にはそう見えた。
しかし時を経るにつれ、様々に進化し、ついには陸に登った。
妹はこの爆発的な進化を恐れた。
なぜなら彼女は安定を望んでいたからだ。
逆に兄は変化を好み、この生命の進化を喜んだ。

こうして世界は生命溢れる神の箱庭となった。