「アタシがまだ高校生になったばかりの時、入学したてで自分の教室が分からなくて、困ってたんです」
「はぁ…」
…えっと、まぁアレだ。
全然先の話が読めない。
何?迷子?
腰をさすりながら俺は気のない返事を返したが、それは別に気にも留めていないらしかった。
「そんな時に通りかかったのが、あなたです、彗さん」
「俺?」
「はいっ」
ニッコリと微笑みながら、女の子は大きく頷いた。
そして、懐かしさからか、口調を弾ませながら話を続ける。
「廊下に突っ立っている私に、“何してんだ、こんなとこで”って、声を掛けてくれたんです」
『何してんだ、こんなとこで』?
………ん?
そう言われれば、…

