私は東山先輩の下の名前すら知らない。
教師を目指して、野球部に入ってることくらいしか知らない。
入学してしばらく、東山先輩を探した。
合格しました!って、ちゃんと言いたくて。
でも、四年生の東山先輩は、ほとんど学校に来ることはなく、結局、今日まで会えてなかった。
日本史の授業が終わっても、しつこく、聞いてくる久美を適当に相手して、食堂に向かっていた。
人でごった返してる中に、みつけた。
ずっと、探してた人、東山先輩を。
私は、知らぬ間に
「あっ。」と 声を出したまま、その場に立ち止まった。
東山先輩は前の方を友達と歩いていて、
後ろを振り向き、私に気付いた。
だけど、私があの時の唯だと言うことは、分かっていなくて、見つめたままでいる私にニコッと笑って いなくなってしまった。
