【長編】雨とチョコレート



「・・・そういえば、寺が敬語使うようなったのあれからだよな?」


畳の上に大の字になる。

あぐらをかいた奥寺は、情けない目を伏せた。



「私のせいで、坊が幼稚園に通えなくなったようなもんですからね。
『やられたら』・・・」


懐かしい言葉。


「『やりかえせ』か・・・」



奥寺のこのコトバに続いて完成されたあの名ゼリフは、以来、聞かなくなった。



「いまだに、なんで殴ったか覚えてないんですか?」

「うん・・・」


「ま、いいですけど」




じゃあ、いうな、って、笑った。