【長編】雨とチョコレート



手をつなぐのなんて小学校低学年以来だったかもしれない。

手を握られた、と分かった瞬間、しのは顔をはっと上げてあわて始めた。

それから無理やり手を離そうとする。
俺は、離れないように腕をつかみなおした。


「こんなの見つかったら、またゆり先生に・・・・!
わたし・・・・・!!」

「それが、勘違いだったんだって!」

「へ?」


相当混乱してる。
俺だってゆりぴょんに話を聞いたときは驚いた。


だけど、いつまでも混乱させてるわけにはいかない。

落ち着いて話せるように、俺は深く呼吸をした。


「ゆりぴょんって婚約者がいるんだよ」


しのの目が、点になった。


「・・・・噂は・・・・? 先生が、生徒を好きだっていう・・・」


「あれは、あくまで噂だった・・・」


「確認したの?」


「したよ」


「どうやって・・・」


「ゆりぴょんに訊いた」


「・・・・証拠ないじゃん」



・・・・・・しのってこんなに頑固だった?
俺が知らなかっただけ?