【長編】雨とチョコレート



「ゆりぴょんのことなんだけど」


それを聞いたしのは、思い出した、という顔をした。
それからぽつりと一言。

「・・・もう帰ったかな・・・」


「HRのあと、保健室にゆりぴょん来てな」

「え?」

「『櫻さんの頭突きってすごいわね』って」

「わたしを貶(けな)して行った?」



しののオーラがどんよりと曇る。
肩が明らかに下がってる。

俺は、歩きながら話そう、と言ってしのの腕を引っ張った。

しのは流されるままに流されて、鬱々としてる。


ずっとため息ばっかり。



「しの、話ちゃんと聞いてくれる?」


いつまでも下を向いてるから、このままじゃ電柱にぶつかったり、車道に飛び出しても気付かないだろう。

危ないと思って俺はしのの手を握った。