【長編】雨とチョコレート



病室に入ってきた寺と目が合うと、寺は少し驚いたような顔をした。

それから、聞いてましたか、なんて言っていた。

うんって頷くと、嬉しそうに話を始めた。

頭がいいんですね。
知りませんでした。
全然言ってくれないから。

言いながら俺に背を向けて、窓の方を見る。


なんとなく、寺が泣いている気がした。


「俺って、頭良かったのな」

「自分で知らなかったんですか」

「興味なかった」

「…坊らしいです」

「しの、大学行くんだな」

「坊は、行かないんですか」

「・・・わかんね・・・」