【長編】雨とチョコレート



「あ、おじょ・・・・しのさん、」


廊下から、寺の低い声がした。

下手に、”お嬢”なんて呼ぶなよ!!
いろいろめんどくさいだろ!

そんな俺の心配を他所に、2人は会話を続ける。


「今から学校で?」

「そうなんです。推薦で行けたらいいんですけど、勉強するに越したことはないから」


言うとおりだ。
勉強するに越したことはない。


「しのさんは頭がいいって、坊から聞いてますけど」

「そんなことないですよ」

「またまた」

「謙遜とかじゃないです。
れい君からしたら、私なんて全然」


しのの成績は、この間のテストで、確か学年10番台・・・だった気がする。

400人中10番台っていうのは快挙だと思うんだが、それでもしのは譲らない。