【長編】雨とチョコレート



ありがとな


心の中で、礼をする。


バスタオルを畳んで、その上に甚平を重ねた。

それを脱衣所においてあった空のカゴの中にいれて、リビングへ戻った。


しのは、ソファに座ったまま俺の方を見ていて、俺はなんかやるせない気持ちになって、目を合わせないようにしていた。

無意識に。



「俺帰るわ」

「まだ、雨降ってるよ」

「うん」

「傘、」

「いらねぇ」


傘なんて借りたら、俺は、しのとの間に繋がりができそうで嫌だった。

……知らず知らずのうちに、俺は、しのを忘れようとしていたのかもしれない。


「寺に、迎えに来てもらう」

「寺さんに悪いよ」

「いや、あいつも仕事だからさ」



そのまま流れる沈黙。






なんて窮屈――…。