留亜が出て来て、焦りだした。

『ご、ごめん。』

無視。

『ほら、飴…。』

「…それでも彼氏?」

ちょっと怒ったように言ってみる。

『…本当ごめん。好きだよ?』


「それ今関係ないし。」

私がそう言うと

勝手に私の右手を取り、ずんずんと歩いて行く。

「はあ、意味解らない。」

ボソッとつぶやくと

『俺、大人じゃないし。』

「知ってるし。」

『嫌いかもしんないけど…』

「?」

『今日だけでいいから、俺の事、本気で好きになってよ…。』


「好き、よ?」

私が言うと

ブンブン首を振る、留亜。

『いつも、俺と佑夜くん重ねてる…!
苦しいんだよ、今日はそんなことないと思いたかった。

でも、沙恵は…』


あぁ、
私は無意識のうちに

好きでたまらない人を苦しめてる。

ここにいない人のことを想って…


「ごめん。」


『だからさ、せめて笑ってよ?

好きな子の笑顔が何よりも好きだから。』


そう言う、彼の笑顔は眩しくて。

私もつられて自然と笑顔になる。


『そ、それでいーの♪』

と、満足げに言う。


「飴、ちょうだい。」

『はいはい。俺も食べよ!』

色違いの、でも同じ味を口に入れてもっと笑顔になる、留亜。

本当に可愛い。

『もう、子どもみたい。
超可愛い!
飴食べるともっと笑顔になるんだもん、沙恵。』

え、私も…?
そっか、

留亜といると私はいつも笑顔なんだ…。


こんな気持ち、佑夜といる時なかったよ。

「留亜、ほら~早く行こ?」

『なんだよもー、はいはい!』

いつの間にか…嫌い→好きに、変わっていた。

私達は横に並び、
手を繋いで

大好きでたまらなかった、

元彼の家へと向かう。