アイシング、マイラブソング

「悠、リモコンある?」

「うん。そこの、千架の斜め後ろ」

「え、どこ?」

「それ」

「え?」


千架がなかなか見つけられないので、

僕が身を乗り出して近寄った。



「あ、これ?」



その瞬間、

ふたり同時にリモコンに手が伸びた。


互いの手が、

ぴったりと重なり合う。


千架の上から、
僕が覆い被さるように。


突如、どくどくと激しく揺れる心臓。


千架の手もいつになく温かい。


彼女も緊張して、
熱くなっているのだろうか。


そういうことを考える余裕だけはあった。



ぱっと離して、


「ご…ごめん」


と一応一言謝って、
僕はベッドに腰掛けた。


「ううん…じゃ、再生するよ」


千架は遮るように作業を進めた。


ビデオデッキが形式的に作動する。


映画は
観たことのある始まり方で穏便に流れていった。