「…親父…なんで、こんなんになっちゃったんだよ!前の親父は、そんなんじゃなかっただろ?」



「……」



柴咲くんの言葉にお父さんは黙り込んでしまった。




「母さんが死んで辛いのはわかるよ!けど、あれからもう何年も経ってるんだよ!いい加減前向けよ!」



柴咲くんは座っていたお父さんの首元を掴んで揺さぶった。



「ちょっ!柴咲くん!」




「…ごめん、杉浦さんはちょっと黙ってて」



あまりにも柴咲くんが悲し気な表情をするもんだから、私は言われるままに一歩下がって黙り込んだ。



…ここからは親子の問題だよね





「なんとか言えよ!働かないで遊んでばっかで、俺の稼いできた金…一体何に使ってんだよ!言ってみろ!」



「……」



「言えないようなことしてんだろ?知ってるよ、どうせギャンブルだろ?」




「…違う」



柴咲くんのお父さんの口が小さく動いた。




「何が違うんだよ?」



「…すまない」



そう言ったお父さんの声は微かに震えていた。




…何か理由があるはず


お父さんにはきっと、

働けない理由があるはずだ





「ごめん柴咲くん、ちょっとお父さんに聞きたいことがあるんだけど…聞いていい?」



「…うん」