「…ねぇ、柴咲くんのお父さんは何の仕事してるの?」
「……」
私がそう言うと、柴咲くんは突然黙り込んでしまった。
「…ごめん。なんか私…変なこと聞いちゃったかな?」
「いや、別に大丈夫」
そうだ、全部聞いちゃえ
心の中で突っかかってるモヤモヤ全部…
そうすれば、もっと柴咲くんと仲良くなれるよ
中途半端に知っちゃって、
ただ相手に同情してお互いに気まずくなる関係なんて
私は好きじゃない
だから…
「もしかして、ホストクラブで働いてるのって生活費を稼ぐため?」
「…そう…だけど」
柴咲くんは何かの糸が切れたかのように私に話し出してくれた
「…普通のバイトで稼いだ金じゃ、生活出来ないんだよね。俺の家…親父が働いてくんないから」
柴咲くんの言葉に、胸の奥がズキッとした。
「母さんが死んでから何もしなくなっちゃって…俺が苦労して手に入れた金だって…直ぐに使っちゃう」
自分から聞いたくせに、
柴咲くんにかけていい言葉が見つからなくて悔しかった。
「アパート代も電気代も水道代も学校費も…全部俺の金。正直、もう疲れた」
柴咲くんは何を考えてるの?
『疲れた』ってどういう意味?
「そんなこと言っちゃだめ!きっと方法はあるよ!」
「…方法?金がなきゃ、どうにもなんないんだよ」
「違う!お父さんとよく話し合おう?お父さんだって立ち直ってくれるよ!」
グイッ
「は!?ちょっ…どこ行くんだよ!」
私はとっさに立ち上がり、
柴咲くんの腕を掴んだ。
「柴咲くんのお父さんの所!」
私と柴咲くんは、
食べかけのオムライスとハンバーグをテーブルの上に残し店を飛び出した。