「なんだよ、秘密って。…はぁ~てか眠くなってきた」
私はふと、壁に掛かっている時計を見た。
もう2時近くだ…
どんだけ長い間、あの場所にいたのだろう。
「…風呂、どうする?先入るか?」
「えっと…お風呂は大丈夫です」
「は?入んねぇの?汚ねえ奴」
…そんなこと言われたって
今の私がどれだけ悲惨な恰好をしてるのかは自分でもわかってる。
買ったばかりの浴衣は、
それはそれは見事に泥だらけ…
私だってお風呂入りたいよ?
今すぐ、この息苦しくて
泥だらけの浴衣を脱ぎたい…
だけどね?
「…ゆっ浴衣、脱いじゃったら…着方が……」
「わからないと?」
「…はい」
ベットの下で恥ずかしそうにうずくまる私を見て、北城さんは大笑いをしている。
「ぶはっ…超うけるし、お前」
…そんな笑わなくても
私けっこう落ち込んでるのに
「気にすんなよ。俺がどうにかしてやっから心配しないで入ってこい」
「…でも」
「いいから入れ」
そう言いながら北城さんは、私を立たせてお風呂場に押し込んだ。