家への帰り道。
夕姫奈も一緒。

歩いているあいだ、夕姫奈はいろんなことを話してくれた。

バイト先で出会った彼氏の話や、好きな音楽の話。



夕姫奈は変わった。

前は、男とかバイトの話なんてしなかった。



くだらない他愛もない会話盛り上がってた。



家に着くと、夕姫奈は真っ先にこう言った。

『おばさんは?』

一番聞きたくなかった質問だった。

『知らない。』

夕姫奈は知らないが、小学校の時からアタシの母親はあまり家に帰ってこなかった。

アタシが素っ気なく答えると、夕姫奈は何事もなかったように、明るく振る舞い始めた。

そして、夕姫奈は久しぶりに入ったアタシの部屋を見て、

『由月は変わってないや。昔のまんま。』
と笑って言った。


夜ご飯は2人で作り、アタシの部屋で食べた。


夜中じゅう、2人で笑ってた。


あっという間に、時間が過ぎていく。



ふと、思うと、優貴の顔が頭に浮かぶ。



『女子だろ!』

何回もよみがえるフレーズ。



昔から、夕姫奈の方が断然女子力高くて、夕姫奈といるとまるで自分が本当に男みたいな感覚になった。



『由月?どーしたの?なんか、ボーッとしすぎ。もしかして…由月さん、恋でもしました?』

夕姫奈はからかうように笑いながらそう言った。



いつもだったら、すぐ反論するはずなのに、少し考えてしまった。



『別に。なんか変な転校生が今日来たからさ。』
とごまかす。



『ふーん。そーなんだ。それが恋のお相手なんだ。』
夕姫奈はいたずらに笑って、ベットに入った。


『夕姫奈。いい加減にして。好きとか、そんな感情、人に抱くはずないじゃん。』
精一杯強がった。



『はいはい。由月さんは転校生が気になるだけで、好きではないと。もう寝ましょうか。意地っ張りな由月さん?』
夕姫奈は笑いながら私に聞く。



『もういいから。寝よ。』
夕姫奈に言われた言葉は夜中じゅう頭の中にまわっていた。






『恋でもしました?』


恋。






よくわからないまま、日が昇った。