『これから卒業証書授与式を行います。』


そんな言葉から始まった卒業式。



体育館全体からいつもとは違う空気が溢れている。



『西城零』


伊藤ちゃんは低い声で私の名前を呼ぶ。


普段恥ずかしくて大きな声を出さない私。

だけど今日は特別なんだ……



「はい」


大きな声で返事をして立つ。



卒業証書を貰ったらもうこの学校の制服を着ることができなくなる。


よれよれになったブレザーに袖を通すことも


短くきったスカートをはくことも


なくなるんだ……。



3年間雨の日も、風の日も、

雪の日も、暑い日も、

寒い日も毎日通い続けた…

あの道を通ることも



なくなるんだ……



じわじわと目頭が熱くなってくる。




まだ泣いちゃダメだ、


と、自分に言い聞かせ涙を流さないように上を向く。