伊藤ちゃんの話はこんな感じの話だった。




伊藤ちゃんがまだ教師になって2年目くらいの時。



やっと教師生活にも慣れて、
生徒とも仲良くなりそれはそれは充実した毎日だった。



ある時、1人の女の子を目で追っている自分がいることに気がついた伊藤ちゃん。



そしてその子と付き合うことになった。


でもまだ付き合って1週間くらい経ったときに
付き合っていた女の子に言われたんだって。



「私…先生とはもうムリ。



手を繋いでデートもできなくて、

先生が彼氏だって言うこともできなくて、


こんなに辛い思いするなんて思ってなかった。」


この子の気持ちが痛いほどによく分かる。



先生が先生じゃなかったら…


先生が私より早く産まれなかったら…


いつもいつも考える。


それから次の日。



伊藤ちゃんは見たんだって。



付き合ってた子がクラスの男の子と仲良く手を繋いで歩いていたことを。


それで伊藤ちゃんは気づいた。



『俺への恋心はただの憧れだって…』

そう言った時の伊藤ちゃんの顔は
ものすごく悲しそうで見ていられなかった。



きっとその子のことが
伊藤ちゃんは忘れられていないんだね。



たった1週間でも
思いが通じたその子のことを伊藤ちゃんは本気で好きだったんだね。



そして最後に伊藤ちゃんは、


『教師と付き合うっていうのはものすごく大変なんだ。


俺が付き合ってたときかなり俺は必死だった。

そいつを傷つけたくない、

そいつに辛い思いをさせたくない、


そればっかり考えてた。

確かに付き合ってる生徒も辛いだろう。



だけど俺ら、教師だって辛いんだ。


あの教頭の話を聞いて分かっただろ?


”なんらかの処分”

それが何をさすか。


俺はそういう最悪な結果にならないように応援してるから。』


そう言って伊藤ちゃんは会議室を出て行った。