一瞬、宙に投げ出される浮遊感を味わった。



そして直後、天音は落ちた。

背中から倒れ込むように、斜め後ろに。



箱の中のペンやガムテープが、天音の顔面になだれてきた。



「いたー……」



受け身も取れずに無残に倒れた結果、背中も頭も派手に打った。

飛び出したペンやボンドは、床に広がった天音の髪の中に沈んでいる。

視線を動かすと、足を一本失って粗大ごみと化した古い椅子が見えた。



なんとかしなきゃ、と思いつつも、起き上がるのは億劫で。



「もー、誰か助けてよー!」



そんなことを叫んでも、扉や休憩中の喧噪にかき消されて、天音の声は誰にも届かないのだ。



目を閉じて、思い切り嫌そうに顔をしかめて、天音はため息をついた。

その時。



「……鈴原」

「はい?」