新川は、心の奥から無理やり絞り出したような、苦しげな声をこぼした。



今まで見てきたことを、天音は思い出す。

二回跳んだだけで階段を上りきってしまう跳躍力も、天音の声を聞きとった聴力も、新川の言葉を裏付けている。

新川と天音を繋いだ、この模様も。



「……力は馬鹿みたいに強いし、軽い怪我ならすぐ治る」



すごいね、ともそうなの、とも言えず、天音は黙って新川の話を聞いていた。

何も、言えなかった。



「それで切られて、治して、また切られて、切られて、閉じ込められて、治して、力試して、切られて、治して」



一息に言いきると、新川は喉に爪を立てた。

肩を上下させて喘ぎながら、燃えたつ赤で天音を睨みつける。



「関わっても、いいことなんか一つもない」



天音を拒絶するように、新川は声を硬くした。

触れればこちらが怪我をしてしまいそうで、――それなのに、同時に新川が壊れてしまいそうな、諸刃の強さだ。



新川は何か言おうと口を僅かに開き、一度ためらって閉じた。

そしてもう一度口を開き、辛そうに顔を歪めて、声を絞り出した。



「俺は、悪魔だ」