茶化して言っているようでありながら、異論を認めない、隙のない声音だった。

しかしフルネームを言えないということは、何か裏があると考えて間違いはない。

ここで丸めこまれてはどうなるかわからない、と感じて、天音はすかさずそこを突いた。



「苗字、教えていただけますよね」

『それなら、今から俺が言うことに納得してもらってからだ。……以上、異論はありませんね?』



ここで口調が敬体に変わったということは、口出しする余地はないということだ。

竜也氏は信じがたいが、新川を信じるということにして、天音は渋々了承した。



『助かります。まず簡単に言っておきますが、その紋様は三日放置すれば自然に消えますよ。良かったですね、たった三日です』

「三日もこのままですか!?」

『ええ。そして紋様が消えた後は決して透夜に触らない、そうすれば二度と現れません』



三日もこの模様を全身に貼り付けたまま過ごすとなると、正常に学校生活を送ることは困難になる。

顔をさらせば注目され、隠してもまた注目される。

そして三日を乗り越えても、きっと新川は人の体温を避けて生きることになるし、天音も新川を避けなければならなくなる。



メリットを感じられないのに、なぜこのような現象が起こってしまうのか。



『もう少し早く消せる方法も、あるにはありますがね』