何度かコール音が漏れ聞こえていたが、どうやら繋がったらしい。



「……新川です、ちょっと今、大変なことになって」



新川は、自分の手の甲を眺めながら、電話の向こうの誰かに淡々と状況を説明していく。



天音の手と接触した時に、痛みが走ったこと。

気づけばその個所から模様が這い始めていたこと。

紋様が、あっという間に全身に広がったこと。

――二人だけではどうしようもない、ということ。



「鈴原ですか? ……はい、代わります」

「えっ、私?」

「いいから、出ろ」

「えぇ……わかった」



天音は新川から携帯を受け取り、耳にそっと当てた。



「……お電話代わりました、鈴原です」