模様に覆われた微笑に、天音は何か陰りを感じた。

新川の目の奥で、寂しさが静かに揺らいでいる。

いばらのような紋様に絡めとられた姿は、人間とはかけ離れた凄烈な美しさを内に秘めているようで、



「鈴原、演劇倉庫行くぞ」



滑らかな低音で紡がれるそんな何気ない一言にさえ、心がざわめきを覚えるのだ。



「待って」



さっさと背中を向けて歩き出していた新川を追いかける。



演劇倉庫の中に入ると、新川はクローゼットを軽々と持ち上げて、扉の開閉の邪魔にならず、かつ簡単には中が見えない絶妙な位置に移動させた。

そして自分は、大道具の靴箱の影に隠れてしまった。

天音も倣って新川の隣に腰を下ろす。



新川は制服のポケットから携帯電話を取り出し、誰かに電話をかけた。

きっとその相手が、この異常への対処法を知っている。