「ごめ……当分、戻れそうにない……!」



苦しそうに声を詰まらせ、かつ相手に聞こえるくらいの声量でセリフを絞り出す。

女子トイレという地の利を生かした、仮病作戦だ。


「何? どうした?」

「げろ吐いた……! 練習続けてて……」

「いや誰か呼ぶし」

「やめて! 何とかするから……!」

「……わかった、無理すんなよ! 衣装にこぼすなよ!」



うえぇ、とよろしくない声で返事をすると、久遠は納得して去っていったようだ。

足音が遠ざかったのを聞き、天音は演技につられて険しくなっていた顔をほぐした。



「上出来だな」

「演劇部だもん」



少し得意げに胸を張ってみると、新川は僅かに口角を上げて微笑んだ。