天音の細い指の先から、黒ずんだ赤色の筋が伸びていた。

既に指先から手の甲までが浸食され、さらに筋は手首に向かって伸び続けている。

呆然としているうちにも、それは加速していく。



痛みも違和感も、何もないというのに。

――ただ、怖くて仕方なかった。



「天音!」



どうすればいいのか必死で考えても、非現実的な事態に天音の頭はついていけない。

焦るほどに混乱して、そのせいで苦しくなって、息もできなくなる。

涙が、ほろほろとこぼれ落ちた。



誰か助けて、と天音の心が叫ぶ。

わからなくてわからなくてどうにかなってしまいそうなのに、それでも異常は容赦なく天音の腕を這いあがる。



その時天音の心に、たった一人助けてくれた人の顔が浮かんできた。



気づいた時にはもう、天音は呼びとめる声も振り切って、駆けだしていた。