「……あ、」



長い沈黙の後で、新川が口を開いた。

何かを言おうとしていて、でもその続きはなかった。



ふい、と目を逸らされる。

その時やっと、天音は視線から解放された。



「……あのさ新川くん」

「なんだ」



本当は、何か声をかけたくて仕方なかった。

それなのに天音の中には適切な言葉がなくて、探しても探しても見つからなくて、結局天音は何も言えなかった。



「んーん、なんでもない。私行くね」



ドレスの裾を踏まないように、注意深く立ち上がる。

そのついでにガムテープを拾おうとした時、新川の手が先にガムテープを掴んだ。

天音の手が、新川の骨張った手に当たった。



「……!?」