言ったっけ、と一瞬考え込んで、思い出した。

確かに天音は、『誰か助けてよ』と叫んだのだ。



誰にも聞こえないと思っていたのに、新川は天音の声を拾ってくれた。

自分だって苦しいはずなのに。



「……うん、言った。ありがとう」

「別に」



新川はそっけなく答えると、ペンの束を、天音が持っている箱の中に入れた。

ばら、と音が鳴って箱の中を色とりどりのペンが転がる。



「そんなに大声だった?」

「いや、……中の方がうるさかった」

「耳いいんだね」

「……そうかもな」



その時新川は、なぜだか忌まわしげに目を閉じた。