そういってあたしの腕を引きながら歩き出した。

奏翔はいつもそうだ。

小さい頃からあたしの側にいて
いつだって手を引いてくれる。


ぶっきらぼうな言葉をぶつけてくるけど本当はすごく優しい。


そんな奏翔があたしは好き。

大好きなんだ。


本人には言ってないけどね・・・。
てゆうか言えないよ。

あたしに言う資格なんてない。

奏翔があの事知ったらあたしを嫌うだろう。きっと離れていってしまう。

もう嫌なんだよ。
大切な人が離れていくの。

だから、だから
言わないの。


本当の事を奥底に閉じ込めるより大切な人を、奏翔を、失う方がずっと悲しいから。

もう誰も失いたくない。


「じゃあな〜」

「うん。ばいばい」


奏翔の家はあたしの家の向かい側にある。

奏翔が家に入ったのを確認してからあたしは何もない空白の世界へと足を踏み入れた。

「ただいま」

自分の声だけが悲しく響いて消える。

返事はない。誰もいないから。

もう『お帰り』って微笑んでくれる人はいない。
『お前細ぇんだからもっと飯くえ』って笑ってくれる人はいない。

二度と会う事はないだろう。

きっと憎んでる。
あたしの事を憎んでいる。