『頼城ちゃんがかけてくるなんて珍しいじゃん。もう奏の家に着いたのか?』
「いや、まだだ。今は奏の家の近くの公園でな。まだ起きないから目を覚ますまで待とうと思って。
寝ている奏を俺が家に運ぶわけにはいかないだろ」
『なるほどねー。で?俺に何の用?奏を襲いそうになっちゃったから気を紛らわすために……とか?』
電話の奥で、勇人以外の笑い声がした。
「馬鹿かお前は。今、桐渓さんも一緒か?」
『あぁ』
「じゃあ、桐渓さんに奏の家に上手い具合に連絡を入れるように頼んでくれないか?奏が起きるまで少し待とうと思うから……念のために、な」
『おっけー。ただし!今日の奏がいつもに増して可愛いからって手ぇ出すなよ』
「出さねぇよ。大体、お前は何回同じこと言えば気が済むんだよ」
『いやー、だって最近流行りらしいからな。教師と生徒の禁断の恋っての?』
「血が繋がってるわけでもあるまいし、“禁断”って言い方は合わない気もするけど……流行ってんのか?」
『何か本屋に漫画やら小説やらたくさん置いてあったからなぁ……。間違いねぇよ』
「……俺って、そんなに節操のない人間に見えるのか?」
俺は、流行りに乗って生徒に手を出すような教師に見える……のか?
確かに、勇人にはよくホストだとか言われるし、最近では敬語も使われなくなってるけど……
『そうじゃねぇから言ってんだよ』