恋歌 〜secret love〜

「押端さん……笑わないでくれますか?」



さっきよりも少し大きな声でそう言った先生が、苦笑いをしてる。


そんな、困ったような笑顔にも、つい見とれる。



『諦めなくても良い』



昨日彩乃に言われたおかげかな……?



頼城先生を見てると、相変わらず緊張して頭がパニック状態になるし、顔だって背けたくなる。



だけど

今までに感じていたような、心が押しつぶされそうな後ろめたさも、痛みも感じない。



心が締め付けられるみたいな苦しさは感じるけど

今は同時に、心が軽くなった感じもする。



「ぼーっとしてるけど、大丈夫か?」


「えっ!?あ、あぁー……?はい」



知らないうちにフリーズしていたあたしの顔を、頼城先生が不思議そうに覗き込んだ。



焦ってぐだぐだなあたしの返事に安心したのか、先生は少し笑って、残っていたからあげに手を伸ばす。



「今日はありがとう。これ、押端さん達が作ったんだろ?」


「あっ、はい」



先生は、箸でつまんでいたからあげを口の中に入れて、また笑った。



「すごく美味いよ。こんなに賑やかな食事も久しぶりで、楽しかったし」



そう言って微笑んだ先生の表情が、今度はどこか切なそうで……

あたしはとりあえず、「またいつでも作りますよ」なんて言った。