さっきまで森田先生がいたポジションに、若そうな男の人が立った。




でも、まともに始業式の話を聞いてなかったあたしには

教壇に立つ彼に関する記憶がない。




「3年9組副担任の頼城隆夢[たよしろたかむ]です。今年転任してきました。

授業では、英語長文とリスニングを担当します。部活は音楽部です。
1年間よろしくお願いします」





教室に、パチパチと拍手の音が響いた。


頼城先生は、それに答えるみたいにはにかんでる。





背は、男の人としては低い方。


体は、適度に引き締まってそう。


顔は格好良いけど、特別に騒ぐ程じゃないと思う。




黒いスーツに、白いシャツ。


窮屈そうな黒いネクタイ。


短くて黒い髪。


低くも高くもない声。






それなのに、何でかな……?




あたしは何故か、彼に惹かれた。






運命の出会いだとか騒ぐ女の子達には、共感も納得もできない。




だけど



それなのに、今は



もしもこの出会いが運命だったら……って可愛らしいことを考える

そんな気持ちの悪い自分がいた。