皮肉にも彼は、あたしが絶望していたはずの“教師”で……
皮肉にも彼は、あたしが諦めようと必死な、好きな人だった。
「頼城先生にはね……、恥ずかしいけど、一目惚れしちゃったの」
彩乃は、今日のために準備したお菓子に触れることもなく
何か口を挿むわけでもなく
じっと一点を見つめながらあたしの話を聞いていた。
「ごめんね、彩乃。今まで黙ってて。
……夢がシンガーソングライターだったってことも、好きな人が頼城先生だってことも、……全部諦めてるってことも。
全部ね、言ったら軽蔑されるんじゃないかって、恐くて言えなかったの」
彩乃は、何も言わない。
「ごめんね。あたしの話なんかくだらないよね!
あー……もう忘れてっ!彩乃の話しようよ!そっちの方が絶対楽しいって!
女子高生は恋バナなんでしょ?」
それでも彩乃は、やっぱり何も言わない。
あたしには、この沈黙がとてつもなく恐い。
このまま家を追い出されるんじゃないか
とか。
友達をやめられるんじゃないか
とか。
勝手な不安は積もっていくばっかで
どんどん自分自身を追い詰めていく気がする。
バンドの話だって、白紙……だよね……――――
「本当にくだらない」


