お風呂にも入ったあたし達は、彩乃の部屋にいた。



「奏が家に泊まるのって結構久しぶりだよねぇ」


「うん。何か、わざわざごめんね」


「気にしないで!親も妹も奏のこと気に入ってるから大歓迎だってさ。

可愛いし、礼儀正しいし、って誉めまくってたよー。バンドも見に行くって!」



バンド、か。



実はまだ、いまいち実感がない。


まさか自分に、人前で歌う機会があるなんて思ってもいなかった。



勇人が作った曲に、メンバーの誰かが詞を付けて、演奏する。


それをあたし達のパターンにする……らしい。



ステージを使えるのは40分間。

だから、披露するのは合計で8曲くらい。



勇人が全部作曲してくれることに安心しつつ

どうせやるならあたしも……

なんて、欲張りなことを考えるあたしもいる。



それで何かが変わるわけでもないのに……

あたし、往生際悪いよね……――――