「では、これから1時間程、お時間をいただきます。20分前には今と同じ状態でこちらの控室に戻っていて下さい。

それまでは、ご自由にしていて下さって構いませんので」



控室に戻って、グレースーツの女の人からのこれからの説明を、みんなで聞いた。



待って、歌って、待って、話して、また待って、……。


想像してた以上に神経を使うんだな、オーディションって。



小さく息を吐き出したところで、説明が終わった。



「押端奏さん! ちょっと……」



にぎやかになろうとしていた控室に、あたしの名前が響いた。



不思議に思いながら、女の人に近づく。



「これ、さっきのアピールタイムで読まれたメッセージです。推薦者の方にメッセージをってお願いしたら、こんなに綺麗なお手紙を下さったので……。

あなたが持っていた方が良いと思って」


「あ、ありがとうございます……」


「では、発表までしばらくお待ち下さいね」



綺麗に笑った女の人に、あたしは慌てて頭を下げた。



くるっと踵を返して部屋を出て行ったその人を目で追う。



「なぁに? それ」